ここであたふたする自分になっちゃダメだと思った。「ちっ、ああは言ったものの、そこまでテメエなんかに興味ねーよ」みたいな余裕を持って、スマートに、ひたすらスマートに。それが自分への挑戦、成長に向けてのやるべき課題。
数日ぶりに見る彼女はさらに魅力的に映り、もはや世界一の美女。でも、振り絞った「おはよう」の返事は第三者が見てもそっけ無かった感じ。
それでも動いちゃいけないって自分に言い聞かせるのは、もー辛いのなんの。ひさびさに心が軋む音を聞く。鉄の防波堤は決壊しないけど、水位はギリギリ。なので、残業組でなんとなく同僚の家に集まった帰り道、その「おはよう」の一部始終を見ていた、普段は無口な奴に、何があったのかをとうとう漏らす。
「そのうち元に戻るんじゃないですか？」
寒空のコンビニの前、深酒に付き合ってくれた男のやさしさを知り、そして自分は彼をJRの駅まで連れてったあと、無事に帰れたかどうかの安否を気遣ってる自分のやさしさを知る。
深夜、仕事の真似をした電話の架けあいっこは、すごく楽しかった。
